前回のコラムでは、弁護士に契約書や利用規約をレビュー依頼をする意味について説明しましたが、今回は特に利用規約に話を絞り、弁護士に依頼されなかった場合の利用規約(普段、利用規約のドラフトやレビューをやりなれていない弁護士が行った場合を含みます)に、よく生じていることと、それにより生じる不利益について解説します。
前回のコラムでは、弁護士に契約書や利用規約をレビュー依頼をする意味について説明しましたが、今回は特に利用規約に話を絞り、弁護士に依頼されなかった場合の利用規約(普段、利用規約のドラフトやレビューをやりなれていない弁護士が行った場合を含みます)に、よく生じていることと、それにより生じる不利益について解説します。
(1)非常によくあるものとしては、toC向けサービスにおいて、消費者契約法への意識が全くない利用規約です。
例えば、
・当社は、本サービスに起因する損害について、一切責任を負いません
・当社は、当社に故意又は重過失ある場合を除き、一切責任負いません。
・本サービスを中途解約する場合、残存期間分の利用料相当額を直ちに支払うものとします
等といったものです。
一つ目は、全部の免責(損害賠償責任を負わないこと)であり、事業者側に有利すぎるため、消費者契約法への知識がなくとも、やりすぎではないかと事業者様においても自ら判断されるのか、以前よりは見かけなくなりました(それでも、時折見かけます。)。
二つ目は、事業者側が軽過失にとどまる場合には免責されるものであり、一見すると問題ないようにも思われます(この規定は、よく見られます)。しかし、消費者契約法上は、そもそも過失の程度を問わずに、全部免責は無効とされていますので、無効な規定です。
三つ目は、損害賠償の予定に相当するものです。残存期間分の利用料相当額を請求することに合理性がない限りは、無効といわざるを得ません。
上記のように、一見して無効であるものや場合によっては無効となるものがありますし、ビジネスジャッジとして争われた場合の無効になるリスクを承知で規定を設けている場合もあります。私としては、最終的にはビジネスジャッジですし、企業の成長ステージにあわせた対応を行われることも対応方法の一つとしてあり得るものとは思いますが、これらのリスクの程度を把握されないで、単に「他社の規約で使われていたから」という理由でそのまま自社の利用規約にも入れることはおすすめできません。このような規定は、
・平常時における、SNS上での規約自体の炎上
・ユーザーとトラブルになった場合における、ユーザー側からの主張のフックとなるおそれ
・ユーザーに損害が生じた場合において、免責規定が発動しないおそれ
につながります。
上記は比較的分かりやすいですが、上記以外でも、消費者契約法上無効になる規定は多くあり、これらへの配慮が欠けている利用規約は実際に業務を日々行っている中で多く見られますので、自社の利用規約について点検を行われるべきといえます。
(2)toCサービスに限らず、BtoC、BtoB、toBサービスにおいても問題になるポイントは多くあります。
例えば、
・サービス内通貨やポイントを発行する場合、資金決済法上の前払式支払手段に該当する可能性があります。資金決済法上の適用除外に該当しない限り、種別によって、届出や登録が必要となります
・求人企業と求職者をマッチングさせるサービスを行うにあたり、情報の選別加工等があれば、職業紹介事業としての許可や届出が必要となります
・クラウドソーシングサービス等において、ユーザー間におけるお金のやり取りにプラットフォーマーが関与する場合、資金決済法上の資金移動業に該当するおそれがあります
といった点は、実務上よく見受けられます(特に、一定のビジネスマッチングサービスにおいて、マッチング(仲介や取次等)を行うこと自体が許可や届出の対象となる場合があります)。
入れるべき条項を設けていない、入れてはいけない条項を設けている等、業法が絡んだ地雷が多いため、気づかぬ内に業法違反になっていることが多くあります。このような利用規約になっているからといって、直ちに規制当局が気づくものではないためサービスがそのまま提供されてしまうこともありますが、競合他社からの通報やユーザーとのトラブルからの通報等によって、当局対応や賠償対象に迫られ、サービス終了に至ってしまうケースもありますので、十分な検討が必要といえます。
なお、実際に、資金決済法との関係で財務局対応に迫られた段階から受任したことがありますが、当該クライアント様は、対応完了後も、当局から監視を受けている可能性から、通常時よりも法令に配慮したサービス運営にならざるを得なくなりました。
(1)法的に不明瞭な部分が多い
法的に不明瞭な部分が多い、というのはピンときづらいかもしれません。なぜなら、そもそも、法的に明瞭かどうかというものが民法等のルールを前提としたものだからです。
実務上、よくある例としては、債権回収のご依頼をいただいた場合によく生じます。
(本当に非常によくある例ですが)例えば、ユーザーが月額料金を支払わなくなっており、支払の催促をしたところ、ユーザーから「もう不要なので解約する」とだけ言われた、そのため、利用規約に則って、中途解約金を請求したがこれも支払われていないというご依頼です。
ご依頼に際して、いただいた利用規約をみると、
・いつどのように契約成立となるのかよくわからない
・(自動更新されていたという事例で)契約の有効期間の定めが不明瞭であり、いつ自動更新されたのかがよくわからない
・中途解約をどのように行い、その場合、どのような金額が発生するのかよくわからない
等といったことがよくあります。
利用規約上よくわからないため、私の方からクライアント様に確認させていただくと、どうやら利用規約にはない裏の手続が多いということがわかり、利用規約と整合していない事態がわかります。こちらとしては、その裏の手続と利用規約上の定めが不整合を起こさない範囲で、支払の催促をする文章を考えるものの、そのよくわからない部分こそが相手からの反論ポイントになり、結局、支払がうやむやになったり、本来の請求額の半分以下の額の支払いで和解することになります。
利用規約は、すべてを明瞭に記載するものではありませんが、実際にお金を請求するという段階を想定して、明瞭に記載したほうがいいポイントとあえて不明瞭にするポイントを分けて記載すべきといえます。
(2)全体的に整合がとれていない
他社の利用規約をみていると、各部分で使われている用語がばらばらであることが散見されます。この場合、上記のように、具体的な請求をユーザーにする段階において、どのような規定に基づいたものであるのかがぼやけてしまいます。このようなぼやけがあることにより、単に具体的な請求をすればいいはずのものであったものが、ユーザーからの反論を受けてしまい、支払もうやむやにされてしまいます。
また、同じような条項が色々な箇所にあるという例も見られます。この場合、例えば、事業者側の責任を限定する規定において、今回はどの規定が適用されるのかが分からなくなってしまい、この点でユーザーと揉めることになります。
このように、部分部分でみれば問題がない条項であっても、全体を通してみたときに、ちぐはぐな条項のまとまりになっていることは、弁護士が関与していない利用規約ですとよくみられ、対応すべきといえます。
上記で、弁護士ではない方や利用規約をやりなれていない方が作成・レビューした利用規約の問題点に触れましたが、そもそもこのような問題点は、普段から利用規約に関する業務を行っていないと気付くのは難しいと思います。
私も、弁護士登録直後は、利用規約のどこが問題になるのかがピンと来ていませんでした。しかし、登録依頼から早6年近く、毎月最低でも1本以上は利用規約のドラフトを行っており(レビューだけなら月5本以上は行っています)、職業病的にプライベートでも他社の利用規約を確認しています。
今回のコラムを読まれて自社の利用規約に不安をもたれた場合、一度ご気軽にご相談ください。
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