【2024年11月1日施行】全事業者必見 フリーランス法について対応すべき事項について【弁護士解説】

※本コラムは、2024年9月28日に執筆しております。
本コラムでは、まもなく施行されるフリーランス法について、
・そもそもどのような法律なのか
・発注者は、何を対応しなければならないのか
を解説します。

フリーランス法、フリーランス保護法、フリーランス新法と、巷ではいろいろな呼び方をされていますが、正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」という法律です(長いので、以下「フリーランス法」といいます)。

この法律は、国も力を入れており、内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の連名で下記の様なイラストを豊富に盛り込んだ特設サイトパンフレットが作成され、電車広告など周知も積極的に行われています。

今後は対策を行わないと気づかぬうちにフリーランス法違反になっていたり、フリーランスの方々から本法律に基づく主張を受けることも想定されます。

そのため、IPOを目指される事業者様はもちろんですが、普段、業務委託をお願いしているというすべての皆様(フリーランスに発注をされるフリーランスの皆様も含みます)は、ざっくりでよいので本記事で本法律を理解しましょう。

しかし、本記事をご覧の皆様が気になっているのは、
①フリーランス法の適用対象になるのか、
②フリーランス法について何をしなければならないのか、
の2点に尽きると思います。

分かりやすさとの兼ね合いからは、
どうしても概要的・大雑把にならざるを得ませんし、複雑な法律なので内容としても端折りきれない部分もありますが、その点ご承知のうえでお読みいただければ幸いです。

1.フリーランス法の概要

一言でいえば、フリーランスに業務委託をする場合・した場合のルールを新たに整備したもので、そのルールは、大まかに
①取引の適正化に係る規定
・取引条件の明示義務(第3条)
・期日における報酬支払義務(第4条)
・発注事業者の禁止行為(第5条)
②就業環境の整備
・募集情報の的確表示義務(第12条)
・ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)
・育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)
・中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)
の2つに分かれます。

フリーランス法違反があった場合、①は主に公正取引委員会及び中小企業庁が、②は主に厚生労働省が、助言・指導や報告徴収・立入検査、勧告・公表・命令といった処分を行います。

上記義務は、一律ですべて適用されるわけではありません。
まずフリーランス法の対象かどうかは
①フリーランス側の属性
により決まります。

そのうえで
②委託する側の属性
③委託契約の内容(委託期間)
上記それぞれの条件に該当するごとに、適用される義務が追加されていきます。

次の項目から、その適用条件について解説しますので、次の項目を目次的に使用されると理解が進むと思います。

2.適用条件

やや長くて複雑ですが、ここを読み飛ばすとその後が分からなくなるため、各条件をきちんと確認されることをおすすめします。記事内リンクから適用対象ごとに対応する義務へ遷移しますので、参照しながらお読みください。

(1)フリーランス側の属性【特定受託事業者】

  • 特定受託事業者該当性

    まず、フリーランス法では、フリーランスのうちで「特定受託事業者」と定義づけられる者を保護しており、これは次に該当する者のことをいいます。
    【特定受託事業者】
    業務委託(物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託すること)の相手方であるフリーランスのうち、次の①、②のいずれかに該当する者
    個人であって、従業員を使用しないもの
    法人であって、次の❶又は❷いずれにも該当するもの
     ❶一人の代表者以外に他の役員がいない
     ❷従業員を使用しないもの

    つまり、何か作成や作業を委託(発注)する場合、相手方のフリーランスが、上記①か②に該当すれば、フリーランス法が適用される「特定受託事業者」となります。
    【具体例】
    ・営業代行に関する契約
    ・サービスの開発に関する契約
    ・マーケティングに関する契約
    ・オフィスの清掃に関する契約
    ・経理作業に関する契約
    ・事業者内部の作業を代行してもらう契約

    ①と②における「従業員を使用」というのは「1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用すること」を意味します。
    個人のフリーランスの方が従業員を雇用しているケースは多くはないでしょうから、個人のフリーランスの方に業務委託を発注する場合(契約名が「業務委託契約」かどうかは問いません)、ほとんどの取引に適用されるといっても過言ではないでしょう。
    ②は、個人が法人成りした、いわゆる一人社長のようなケースで該当します。
    そもそも、業務を発注する側からすれば、相手方が「従業員を使用」しているかどうかは分からないので、基本的には該当する前提で動かざるを得ないのが実情かと思われます。

    なお、発注を受けるフリーランス側が上記の「特定受託事業者」に該当する場合は、発注する側がどのような属性であってもフリーランス法が適用されます。 つまり、発注する側がフリーランスの場合も、発注される側がフリーランスであればフリーランス法に気を付けなければなりません

    【Point】
    ・売買等の契約ではない、何らかの業務のお願いをする契約は、ほとんどがフリーランス法の適用対象となる
    ・個人のフリーランスが従業員を雇っていない場合/法人のフリーランスが役員2名以上か、従業員を雇っていない場合等はフリーランスの対象となる
    ⇒事業者による世の中の多くの業務委託が適用対象となる

  • 特定受託事業者に該当した場合の義務

    発注を受けるフリーランスが、この(1)に該当する場合(発注を受ける側が「特定受託事業者」の場合)、発注する側に適用される義務は以下のとおりです(ただし、後記(2)(3)に該当する場合は義務が加重されます)。
    【(1)の場合の適用義務)】(※クリックすることで義務内容に遷移します)
    取引条件の明示義務(第3条)


(2)【委託する側の属性】特定業務委託事業者

  • 特定業務委託事業者該当性

    発注先が(1)の「特定受託事業者」に該当するフリーランスの場合、フリーランス法が適用されますが、発注者が下記①か②に該当する場合は、「特定業務委託事業者」として、更に適用される義務が追加されます。
    【特定業務委託事業者】
    フリーランスに発注する側が、下記の①か②に該当する者
    ①個人であって、従業員を使用するもの
    ②法人であって、2人以上の役員がいる、または従業員を使用するもの

    ①②の「従業員を使用するもの」は、前記同様、週所定労働時間が20時間以上かつ継続して31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することを意味します。(※1)
    一方で、②は注意が必要です。個人が法人成りした会社であって、誰とも雇用契約を締結していない場合であっても、例えば、自分以外の家族の誰かを取締役として入れる等していると該当してしまうからです(※2)

    ※1 事業に同居親族のみを使用している場合、「従業員を使用するもの」に該当しないとされています
    ※2 役員についての同居親族の例外は、公正取引委員会及び厚生労働省策定の特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方でも触れられていません。

    【Point】
    フリーランスに発注する側が、①従業員を使用する個人 or ②2人以上の役員又は従業員を使用する法人であれば、より厳しい義務が課される

  • 特定業務委託事業者に該当した場合の義務

    フリーランスが「特定受託事業者」で、発注する側が「特定業務委託事業者」に該当する場合、追加で適用される義務は以下のとおりです。
    【特定業務委託事業者に該当した場合の適用義務】
    取引条件の明示義務(第3条)
    期日における報酬支払義務(第4条)<New!>
    募集情報の的確表示義務(第12条)<New!>
    ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)<New!>


(3)【③委託契約の内容(委託期間)】特定業務委託事業者が一定期間以上の業務を委託する場合

3.【対応事項①】取引条件の明示義務(第3条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合

事業者は、フリーランス(特定受託事業者)に対し業務委託をすることを合意した場合(※1)直ちに(すぐに。一切の遅れが許されません)以下の取引の条件(※2)を、書面、メール、SMS、SNSにおけるメッセージ機能等(※3)により明示しなければなりません。

要するに、口約束ではだめで、必ず、記録が残る形で、取引条件を明示しなければならないですし、法律で定める明示しなければならない事項を不足なく明示しなければならないということです。
明示すべき事項 具体的内容及び補足
①委託側の事業者及びフリーランスの商号、氏名若しくは名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって業務委託事業者及び特定受託事業者を識別できるもの 発注事業者とフリーランス、それぞれの名称
②業務委託をした日 業務委託をすることについて合意した日
③特定受託事業者の給付(役務提供委託の場合は役務提供)の内容 委託する業務内容のことです
※1 給付の内容には、品目、品種、数量(回数)、規格、仕様等を明確に記載する必要あり
※2 フリーランスの知的財産権が発生する場合に、業務委託の目的である使用の範囲を超えて知的財産権を譲渡・許諾させるときは、譲渡・許諾の範囲も明確に記載する必要あり
④特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日(期間を定めるものにあっては、当該期間) 制作物の納期や作業日・時期のことです
⑤特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所 納品場所や業務場所のことです
⑥特定受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日 制作物の業務委託の場合に、検査をするときの、事業者側における検査完了の期日のことです
⑦報酬の額及び支払期日 支払期日については、「●月●日支払」等としなければならず、「●日以内」や「●日まで」といった定めは許容されません
⑧現金以外の方法(手形等)で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること 手形や債権譲渡担保方式、ファクタリング方式等による場合の所定事項です

※1のとおり、明示時期について条文上は「業務委託をした場合」とありますが、前記法律の考え方7頁によると、これは業務委託をすることについて合意した場合をいうとされています。

※2のとおり、上記事項をすべて明示しなければならないのが原則ですが、その内容が定められないことにつき正当な理由があるものは、明示を要しません。ただし、この場合でも、委託時点において、❶その内容が定められない理由と❷未定事項の内容が決まる予定日を明示しなければなりませんし、明示しなかった内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により明示しなければなりません

※3のとおり、取引条件の明示は、書面に限らず、メール、SMS、SNSにおけるメッセージ機能等でも明示したこととなります。ただし、フリーランス側が書面を要求した場合は、遅滞なく書面で交付する必要があります。

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
フリーランスに対して取引条件を明示するための文章のテンプレを用意する必要があります
・契約書・発注書でも明示は可能ですが、その場合、契約書・発注書の見直しが必要となります
※ちなみに、明示事項のうち「②業務委託をした日」とは、業務委託をすることについて合意をした日をいいますが、形式的にいえば発注書や契約書を合意前に交付する場合、交付時点では合意をした日は明示することはできないのではないかという疑問があります。パンフレット8頁の発注書による例では、当然の様に発注日が記載されていますが、工夫が必要と思われます。

4.【対応事項②】期日における報酬支払義務(第4条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合で、発注する側が「特定業務委託事業者」となる場合限定>

発注する側の事業者は、フリーランスに対する報酬の支払期日を、給付を受領した日から起算して60日以内で、かつ、できる限り短い期間内で設定しなければならず、これより短い期間とした場合はフリーランス法違反となります。

仮に上記に違反している場合、フリーランス法の適用においては下記とみなされます。
・支払期日を定めなかった場合
 給付を受領した日が報酬の支払期日
・給付を受領した日から起算して60日を超える日を支払期日と定めた場合
 給付を受領した日から起算して60日を経過した日の前日が報酬の支払期日
※民法上・契約上の話として、支払期日をどう考えるかとは別問題です(ちなみに、行政側の担当官解説(NBL1246号・公正取引No.873)では、当事者間の合意内容を変更させる等の民事上の効果を生ずるものではないと明言されていますが、実際のところは個々の契約解釈や裁判所の判断によるものと思われます)

ただし、フリーランスへの委託(発注)が再委託になる場合(元委託者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合)に、事業者が、前記【対応事項①】の明示事項として、次の内容も明示したときは、報酬の支払期日を、元委託の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で設定できます
①再委託である旨
②元委託者の商号、氏名若しくは名称又は事業者別に付された番号、記号その他の符号であって元委託者を識別できるもの
③元委託業務の対価の支払期日
そのため、元委託との関係で支払期日を定めたい場合、【対応事項①】の明示事項に、再委託であることや元委託者の名称等を追加しなければなりません。

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
・フリーランスに対する報酬の支払いが、60日以内となっているか見直しをし、なっていない場合には60日以内になるよう対応する
・再委託の場合に、フリーランスに対する報酬の支払期日を元委託の支払期日から起算して30日以内にしたい場合には、再委託である旨・元委託者の名称等・元委託の支払期日も明示する

5.【対応事項③】募集情報の的確表示義務(第12条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合で、発注する側が「特定業務委託事業者」となる場合限定>

発注する側の事業者は、フリーランスの募集を、①新聞、雑誌に掲載する広告、②文書の掲出・頒布、③書面、④ファックス、⑤メール・メッセージアプリ等(メッセージ機能があるSNSを含む)、⑥放送、有線放送等(テレビ、ラジオ、オンデマンド放送、ホームページ、クラウドソーシングサービスのプラットフォーム等)で行う場合、下記のような情報を表示しなければなりません。また、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません
募集情報の事項 具体的内容の例
①業務の内容 成果物の内容又は役務提供の内容、業務に必要な能力又は資格、検収基準、成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲、違約金に関する定め等
②業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項 業務を遂行する際に想定される場所、納期、期間、時間等
③報酬に関する事項 報酬の額(算定方法を含む)、支払期日、支払方法、交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む)、成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価等
④契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項 契約の解除事由、中途解除の際の費用、違約金に関する定め等
⑤特定受託事業者の募集を行う者に関する事項 発注する側の名称や業績等

注目すべき点としては、上記のとおり、メール・メッセージアプリ等はもちろん、ホームページ、クラウドワークス・ランサーズ・ココナラ等のクラウドソーシングサービスで募集する場合も対象となります。そのため、例えば、募集してから募集条件に変更があった場合には、これらクラウドソーシングサービス上も修正する必要があります。

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
フリーランスを募集する場合の文章のテンプレートの見直しを行う

6.【対応事項④】ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合で、発注する側が「特定業務委託事業者」となる場合限定>

発注する側の事業者は、ハラスメント対策のために、以下の様な体制を整備する義務を負います。
①、②、⑤は、事前に就業規則や広報資料等を作成し、事業者内の労働者やフリーランスに周知等を行うことが必要となりますので、準備が必要といえます。
義務の内容 具体例
①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発
 ❶発注事業者の方針等の明確化と社内(業務委託に係る契約担当者等)へ周知・啓発すること
 ❷ハラスメント行為者に対しては厳正に対処する旨の方針を就業規則等に規定すること
【❶の例】
・就業規則等において、業務委託に対するハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、その内容を労働者に周知・啓発すること
・社内ホームページ等の広報・啓発資料等に業務委託に対するハラスメントの内容及び行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること
・業務委託に対するハラスメントの内容及び行ってはならない旨の方針について研修、講習等を実施すること
【❷の例】
・就業規則等で、ハラスメントを行った者に対する懲戒規定を定め、労働者に周知・啓発すること
・ハラスメントを行った者は、就業規則等において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 ❶相談窓口を設置し、フリーランスへ周知すること
 ❷相談窓口担当者が相談に適切に対応できるようにすること
【❶の例】
外部機関への相談対応の委託、相談対応の担当者や相談対応制度の設置をし、メール等によりフリーランスに案内する
【❷の例】
相談窓口担当者向けのマニュアルを作成し、マニュアルに基づき対応する
③業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
 ❶事案についての事実関係を迅速かつ正確に把握すること
 ❷事実関係の確認ができた場合、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に実施すること
 ❸事実関係の確認ができた場合、行為者に対する措置を適正に実施すること
 ❹ハラスメントに関する方針の再周知・啓発等の再発防止に向けた措置を実施すること
【❶の例】
相談者と行為者の双方から事実関係を確認し、必要に応じて、第三者からも事実関係を聴取する
【❷の例】
事案の内容等に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助や被害者の取引条件上の不利益の回復等を行う
【❸の例】
業務委託におけるハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずる
【❹の例】
従業員に対して業務委託におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施する
④①から③の対応に当たり、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じたうえでの、従業員及びフリーランスに対する周知すること ・プライバシー保護措置を実施のうえ、メール等によりフリーランスに案内する
・プライバシー保護に必要な措置をマニュアル等で定め、相談窓口担当者においてマニュアルに基づき対応する
⑤フリーランスが相談をしたこと、事実関係の確認等に協力したこと、労働局等に対して申出をし、適当な措置を求めたことを理由に契約の解除等の不利益な取扱いをされない旨を定め、フリーランスに周知・啓発すること ハラスメントの相談等を理由として、フリーランスが契約の解除等の不利益な取扱いをされない旨をメール等によりフリーランスに案内する

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
就業規則の見直し等によりフリーランスに対するハラスメント禁止の旨を事業者内で明確化する
・事業者内で、フリーランスに対するハラスメント禁止について研修の実施や事業者内広報資料の作成を行う
・事業者内でのフリーランスに対するハラスメント禁止についての相談窓口を設置し、フリーランスにアナウンス等する

7.【対応事項⑤】発注事業者の禁止行為(第5条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合で、発注する側が「特定業務委託事業者」となる場合のときで、委託期間が1か月以上の場合>

事業者は、下記の様な行為をフリーランスに対して行ってはなりません。この点、下請法同様に注意すべきこととして、これらの行為は、例えフリーランス側が合意・同意していても許されないということです。
契約書とは別に覚書を事後的に締結したから・念書をもらったから・メールで承諾もらったから、それらの場合でも違反です。2024年11月1日以降は下記の禁止行為を行わないように留意しましょう。
禁止行為 具体例
受領拒否の禁止(注文した物品又は情報成果物の受領を、フリーランス側に責めに帰すべき事由がないのに拒むこと) ・取引先からの仕様変更があったことを理由に、フリーランスが当初の納期に提供した、当初の仕様どおりのプログラムを受領しなかった
・事業者が元委託から発注を受ける予定の商品の作成をフリーランスに委託したところ、元委託からの発注がなくなったので不要であるとして、受領しなかった
報酬の減額の禁止(あらかじめ定めた報酬を、フリーランス側に責めに帰すべき事由がないのに減額すること) SaaSサービスの開発を委託しているところ、当該サービスの業績悪化により予算が減少したこととして、あらかじめ定めた額より低い報酬の額を支払った
返品の禁止(受け取った物を、フリーランス側に責めに帰すべき事由がないのに返品すること) フリーランスに制作を委託した広告のイラストを一旦受領したが、広告が中止になり取引先からキャンセルされたため、イラストを返品した
買いたたきの禁止(類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い報酬を不当に定めること) 自社商品の広告動画の制作を委託したところ、見積書作成時よりも納期を大幅に短縮して発注したにもかかわらず、当初の見積額どおりのままとした(結果として通常の対価を大幅に下回る報酬の額となった)
購入・利用強制の禁止(特定業務委託事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること) 自社が制作する放送コンテンツの撮影を委託している中で、自社の関連会社が制作した映画のチケットを、目標枚数を定めて購入させた
不当な経済上の利益の提供要請の禁止(特定受託事業者から金銭、労務の提供等をさせること) 自社商品の広告動画の候補となる複数の動画案の制作を委託し、採用した動画については知的財産権を自社に譲渡する契約としていたところ、採用した動画に加えて、採用しなかった動画の知的財産権を無償で譲渡させた
不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(フリーランス側に責めに帰すべき事由がないのに、費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること) 取引先からの仕様変更があったことを理由に、フリーランスが当初の納期に提供した、当初の仕様どおりのプログラムについて、無償でやり直しをさせた

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
禁止行為についての理解を深め、これらの行為を事業者内の担当者等がフリーランスに行わないよう徹底する

8.【対応事項⑥】育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合で、発注する側が「特定業務委託事業者」となる場合のときで、委託期間が6か月以上の場合>

この場合は、フリーランスから育児介護等(妊娠、出産若しくは育児又は介護を意味します)に関する配慮の申出があった場合、次の①から③までの配慮をしなければなりません(なお、発注する側の事業者が「特定業務委託事業者」であって、委託期間が6か月以上ではない場合は、努力義務となります)。
①配慮の申出の内容等の把握
②配慮の内容又は取り得る選択肢の検討
③配慮が実施できるか否か次第で⇩
 ❶配慮が実施できる場合⇒配慮の内容の伝達及び実施
 ❷配慮が実施できない場合⇒配慮不実施の場合の伝達・理由の説明

また、必要な配慮として、下記の様なものを挙げられています。
・「つわりにより急に業務に対応できなくなる場合について相談したい」との申出に対し、そのような場合の対応についてあらかじめ取決めをしておくこと
・「子の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更すること
・別の事業者から委託された業務をフリーランスに再委託した場合に、「介護のため特定曜日にオンラインで就業したい」と申出があった際、元委託事業者に対して一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
フリーランスから妊娠、出産若しくは育児又は介護に関する配慮の申出があった場合の事業者内のフローを整備し、実際に申出があった場合には配慮義務に則った対応をする

9.【対応事項⑦】中途解除又は契約不更新の事前予告・理由開示義務(第16条)

フリーランスが「特定受託事業者」に該当する場合で、発注する側が「特定業務委託事業者」となる場合のときで、委託期間が6か月以上の場合>

(1)解除・契約不更新の事前予告義務

この場合、契約の解除又は不更新をしようとするときは、下記の例外事由に該当するときを除いて、解除日又は契約満了日から30日前までにその旨を、書面、ファックス、メール、SMS、SNSにおけるメッセージ機能等のいずれかにより、契約の解除をすること又は契約不更新となることを予告しなければなりません
【予告が不要となる例外的な場合】
①災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合
②フリーランスに再委託している場合で、元委託側の事業者の契約解除等により直ちに解除せざるを得ない場合
③委託期間が30日以下である場合
④特定受託事業者の責めに帰すべき事由により直ちに契約の解除をすることが必要であると認められる場合
⑤基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合

注意すべき点として、この義務は、業務委託契約等において、一定の事由がある場合に事前予告なく契約を解除できると定めていた場合においても、直ちに同条の事前予告が不要となるものではないとしており、上記例外事由に該当する場合に限り、事前予告が不要になるとされている点です。
つまり、下記の様な解除条項や反社条項(反社会的勢力に該当する場合は即時に解除できる条項)を契約で定めて、30日前の予告なく解除しようとした場合にも、当然に30日前の予告義務が不要にならないため、個々に上記例外に該当するかを検討する必要があるということです(この点は、パブコメでも言及されていますので、興味ある方はご覧ください)。
【解除条項の具体例】※このような条項を定めたからといって直ちに予告義務が不要とならない
第●条(解除)
甲及び乙は、相手方が次の各号の1つに該当したときは、催告なしに直ちに、本契約の全部又は一部を解除することができる。
(1)本契約に違反し、相当の期間を定めて相手方に対して、その是正を求めたにも関わらず、相手方がその違反を是正しないとき
(2)相手方の信用、名誉又は相互の信頼関係を傷つける行為をしたとき
(3)破産手続、民事再生手続、会社更生手続、その他倒産手続の開始の申立があったとき
(4)差押え、仮差押え、仮処分、競売申立、租税滞納処分、その他これに準ずる手続があったとき

そのため、発注する側の事業者においては、今後、以下の様な対応をする必要があるので留意しましょう。
・契約期間満了前に解除する場合には、たとえ契約上の解除事由に該当しても、個々の事情ごとに、予告義務の対象になるか検討する
・契約更新しないで終了する場合は、予告を行う

(2)解除・契約不更新の理由開示義務

発注する側の事業者に予告義務がある場合((1)に該当する場合)で、予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランス側が解除の理由を請求したときは、発注する側の事業者は、例外となる場合(①第三者の利益を害するおそれがある場合、②他の法令に違反することとなる場合)を除いて、書面、ファックス、メール、SMS、SNSにおけるメッセージ機能等のいずれかにより、遅滞なく、解除の理由を開示しなければなりません。

発注する側の事業者に予告義務がない場合((1)に該当しない場合)、理由開示の義務を負いませんが、予告義務がある場合には、解除予告がされていないときでもフリーランス側は解除理由の請求を行うことができますので、この点も留意が必要です。

上記を踏まえた具体的対応は以下のとおりです。
【具体的対応】
・(契約書の定めにかかわらず)解除する場合・契約を更新しない場合には、30日前に書面やメール等により、その旨を予告するよう、事業者内のフローを変更する
契約書の定めに従って解除する場合も、それがフリーランス法上、予告が不要であるかを都度検討する
・30日前の予告義務が課されるフリーランスから解除・不更新の理由を求められた場合には、その旨を開示するための書面やメール等の雛形を用意等する

10.フリーランス法違反があった場合(法24条等)

フリーランスは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省に対して、発注した側の事業者に本法違反と思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができます。
行政機関は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い、発注した側の事業者に対して指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表をすることができます。
さらに、命令違反(虚偽の報告や検査拒否等)には50万円以下の罰金があります。

注意すべき点として、発注した側の代表者、代理人、使用人、従業員が、命令違反(虚偽の報告や検査拒否等)をした場合、発注した側自体にも罰金が適用されます(両罰規定)。
そのため、従業員が勝手にやったことだから知らなかった、では済まされないということです。

11.まとめ

上記のとおり、フリーランス法の影響範囲は広範であり、内容も難解です。
これまで通りに発注を続けているとフリーランス法に違反し、フリーランス側から行政に対して、申し出がなされ、行政による立入検査や処分を受けるおそれがあります。
施行が近づく中で、発注時や契約の解除時・不更新時、フリーランス募集時におけるフロー、各種就業環境の整備等、見直しを迫られる事項は多岐にわたりますが、本記事を参考に対応を進めていただければと思います。
規制として複雑ではありますので、ご不明な点・悩まれる点があれば、是非下記の相談フォームよりお問い合わせください。疑問の解消からご相談者様の状況に応じた体制の整備まで、必要に応じてサポートして参ります。

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